いつか愛せる

DVのその後のことなど

お爺さんから葉っぱをもらった話

 過去いろんな勧誘に引っかかった私も今は断れるし、そもそも狙われるのは若者が多いらしくターゲットから外れてくれた。それでも人に捕まりやすい体質なのか、道を聞かれたりする頻度は変わらない。ぼ~っとして見えるのかも知れない。

 

 自転車で買物帰りに信号待ちしていたときのこと、誰かが妙に近づいてくるのを察知。コロナ禍なのにと身構えたら、自転車に乗ったお爺さん。あわてて少し身をひいたら話しかけられた。

 お爺さんは大事そうにティッシュにくるんだものを開いて見せてきた。

「これ、別にめずらしいものじゃないけど・・・」

5~6枚の葉っぱ。長さは12~13cmか。厚みと艶があって常緑樹のものと思われる。たじろぎながらも何とか笑顔を作り、

「あ・・・・・きれいですね・・・・・・・・・・・・・・・・・」

と言うとちょっとうれしそうに、

「さっき拾ったんだ。栞にするとちょうど良いと思うよ。あげるよ」

「・・・ありがとうございます・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 ちなみにここは緑の多い地方ではなく、都心に通勤圏内のJRの駅近く。信号が青になり、お爺さんは先に渡って行った。後ろ姿がなんとなくうれしそうに見える。近所の人かなあ。

 私は葉っぱを取りあえずティッシュごとバッグのポケットに入れて帰る。そして夫に、 

「知らないお爺さんに葉っぱもらっちゃったんだけど」

                     

「なんだ!?やばいやつか???」

そんなわけはない。調べてみるとカシの仲間ではないかと思われる。お爺さんの善意は疑いようがないが、何が付着しているかわからない。すんなり栞にする気はしない。とにかく水洗いして数日下駄箱の上に置き乾かした。枯れる様子もなく緑色を保っている。

「やっぱり念のため消毒しておく方がいいんじゃないの?」

と夫が言うので、ティッシュにアルコールを吹きかけて葉っぱの表面をふいた。そしてまた下駄箱の上に置く。すると消毒には耐えられなかったのか、葉っぱは変色してしまった。あ~あ。もし最初から本にはさめば綺麗な栞になっただろうし、他にも使い道はあったはず。

 

「ごめんなさい、お爺さん。捨てます・・・・」

お爺さんはどこの誰かも知らない私が、あの葉っぱを栞にしているのを想像してニコニコしているかも知れないのに。でも善意は受け取ったからいいよねと思った。