いつか愛せる

DVのその後のことなど

義母の退院準備(その2)

 退院日が近づいてきたころ、義母はつかまり歩きができる程度だった。それでもかなりの回復だが、まだ尿カテーテルをつけていて自力で排尿はできない。私がお見舞いに行った日、担当の看護師さんに呼ばれて退院準備の話をされた。

 この看護師さんは義母の世話だけでなくメンタル面も配慮してくれていた。お尻がひどくかぶれて痛そうになったときも、「息子さんに見せるよりはお嫁さんの方が気が楽かと思って・・・」と私を呼んだ。

 内心「え、私が見るの? 義母、絶対嫌がりそう」と思う間も無く、連れて行かれてしまったので「お母さん失礼します!」。義母も嫌だと言う暇もなかったろう。治療を変更するために家族の確認が必要だそうで仕方ない。

 

 その看護師さんに言われたのは、介護ベッドに敷く防水シートを用意しておくこと。それと、尿カテーテルに繋がる袋の入れ物を作っておくこと。入院中に使用しているものは病院のスタッフが作った物だそうで、持ち帰れないし販売もされていない。

 どういう物だったかというと。尿を溜めておくビニール(?)の入れ物が見えないようにするためのキルト素材の布袋。ビニールは健康管理の観点からだろうが、尿の色がまるわかりだったので、それを隠すための袋。幅2センチくらいの長いテープで首にかけられるようになっていた。リハビリや食事に行くときは幼稚園バッグのように首からかけて移動した。

 私は悩む余裕も時間もなく、自分の母に作成を頼んだ。洋裁仕事の経験がある母は、今もハンクラ魂がある(注:ハンドクラフトが得意だ)。大体の寸法と形を伝えただけで、裏地つきの美しい袋を作ってくれた。

 そこでもっと深刻な事態に気づいた。尿カテーテルの付け外しが素人には出来ない・・・もちろんヘルパーさんにも出来ない。(資格のあるヘルパーさんもいるかも知れないが)

ということは頻繁に医療従事者に訪問看護を頼まなければならず、かなりの料金がかかる。カテーテルの付け外しのためだけに一体いくら必要になるのか。

 考えても仕方ないので粛々と準備を進めた。夫の実家には次々に必要な物が取り付けられ、または運ばれた。すべて介護保険が利用できた。

 

レンタル:介護ベッド、車椅子、玄関内の据付タイプの手すり

                 (各月額500円~1000円位)

購  入:ポータブルトイレ(衛生上レンタル不可)、脱臭機能付きゴミ入れ

工  事:手すり(5~6ヶ所だったと思う)、和式トイレを洋式風にするパーツ設置

 

 空っぽにしたサイドボードにはタオルや書類。義母が台所まで頻繁に歩かなくて済むよう、小型のレンジやケトルもレンジ台に置いた。昔からある魔法瓶はもう重くて義母には持てなかった。

 

 義母は自力で排泄出来るよう、リハビリ以外の時間も頑張っていたらしい。カテーテルが邪魔なのは本人が一番わかっていたろう。すると、なんと・・・退院まで1週間を切ったころに、奇跡は起きた。義母は自力でトイレが可能になり、尿カテーテルが不要になった! 神様ありがとう!!

 私の母が作った袋は不要になったが、せっかくなので別のことに使った。退院後、義母に毎週渡すお金を入れるために使用した。(人の出入りが多いので最小限だけ置くことにして、通帳なども我が家で預かった)タオルに紛れさせておけば財布には見えなくて良い。