いつか愛せる

DVのその後のことなど

引越しする羽目になったわけ

 私と夫が実家の介護の慌ただしさのただ中で、引越しなんてしたくないのにマンションを移った話。トラブルの嵐。

 

 その賃貸マンションには18年いた。3階建で2階の部屋。当初の大家さんは近所の地主さんで、会えば挨拶するし、たまに雪が降れば前の道路を雪かきしてくれるような親切な人だった。

でも高齢になって代替わりし、お子さんが大家となり管理会社も替わった。

その少し前から空き部屋が増え始め、ついに半分くらいが空いたままになった。するとお子さんは不良債権となったマンションを手放したらしい。持ち主と管理会社が同時に変更された。

 聞いたことのない社名で、所在地も県外でかなり遠い。この時からマンションの環境がガラッと変わるとは想像もしなかった。

 

 次々に部屋が埋まった。2階は我が家の隣と他に1部屋。3階は我が家の真上と他にも2部屋。(1階はすべて店舗)

埋まった部屋に入ったのは、なぜか大勢の外国人。国籍はバラバラで、ほぼアジア系に見えた。全員が若くほとんど男性。一体何人だろう? 2DKに10人近くいたと思う。民泊だとしても多すぎる。

 でも初めは気にしなかった。我が家の隣の部屋のドアの前に、ふたりの青年がしゃがみ込んでいた。どうやら鍵を持っていないらしい。

夫が気にして話しかけた。「寒くない?」「お腹空いてない?」とお菓子を渡すと「アリガトウ」とカタコトで話した。

 ところが、初めは親切にした夫が後には「ブっ殺してやる!!」と言うに至る。

 

 一番気になったのは騒音。大勢の若者がいれば賑やかで当然だとは思う。でも日本の文化とずれているため妙に目立つ。なぜか電話を使う際は廊下に出るので、我が家の前で話す。深夜や早朝も出入りが多いし話し声がうるさい。足音もやたら大きい。

 他には、ゴミの出し方がメチャクチャ。靴が玄関に入りきらないのか、ドアに挟まっていたり廊下に飛び出している。ドアはよく半開きになっているので、洗面台にシャワー付き(我が家にはない)なのが確認できた。

他に迷惑ではないけれど、雨が降っても洗濯物を常に干しっぱなし。カーテンもつけない。

 彼らに悪意がないのはわかる。こちらから「こんにちは」と声をかければ「コンニチワ」と返ってくる。

ゴミの出し方などはそのうち覚えると思ったが、人の入れ替わりが激しい。覚える前に入れ替わるからいつまで経っても変わらない。

 

 夫は原因不明の不具合で、調子の良い日に実家へ行く以外ほとんど家にいた。だから一日中騒音にさらされる。特に真上の部屋からドスドスと振動が来ることで頭に血が上った。

 初めて警察に電話したのは、深夜に上の階がうるさい時だった。バイクに乗ったお巡りさんがひとり来てくれた。事情を話し、あえて「深夜に怖いんですよ」と伝えた。夫は怖いのでなく腹立てていたのだが、そう言う方がいいと判断した。

 何度か警察を呼ぶ羽目になり、いくつかのことがわかった。これらの部屋の名義は日本名の女性になっていて、入っている若者は日本に来て間もない学生たち。住む場所が決まるまでの間ここにいるとか。警察から名義人の女性にゴミの件などは注意してくれた。お巡りさんには「トラブルになるから直接は話しに行かないでください」と言われた。

 また我が家の真上の部屋のドスドスうるさい振動も、お巡りさんが見に行ってくれた。

私は「柔道の練習でもしているのか?」と思ったけれど、ただ歩いているだけだと言う。

お巡りさんが「目の前で歩いてみて」と言うと、確かにうるさい歩き方だったらしい。彼にはそれが普通なのだから、注意されても習慣を変えるのはほぼ無理だろう。

 

 ついに夫は「もうここ出るぞ!!」と宣言した。そんなお金も時間も無いけど仕方ない。夫は弱ってはいてもボクシングやムエタイが出来る。そして蒸し返したくはないけれどDVの過去もある。彼らに殴りかからない保証はない。

 私は早急に引越し先を探さなくてはならなかった。