いつか愛せる

DVのその後のことなど

日本語の特殊性とAIのお話

 最近とても印象に残った動画が2種類あります。1つは海外の言語学者をエスコートした日本人翻訳家の体験談。もう1つというよりもう1種類は、AIの開発に関する複数の動画です。どちらも日本語の特殊性を高く評価する内容でした。

◆日本語は非効率? 100の言語を研究してきたある言語学者は、来日前は日本語を「非効率」だと批判しまくっていました。文字が平仮名カタカナ漢字と分けるより統一すべきだとか、英語なら「 I 」ひとつしかない一人称が、日本語に100以上もあるのはクレイジーだとか(←日本人でも100種類の一人称は使いこなせないけど)、とにかくボロクソ。ところが彼は、居酒屋に同行した通訳の翻訳家が注文の際「おまかせで」とだけ言った時、「なぜひとことで適切な注文ができるのか」と質問します。これがきっかけになり、効率などでは図れない日本語の特徴を追及し始めました。以降はすっかり夢中になり、日本語に関する書籍まで執筆中だとか。この言語学者さん、自分の間違いを素直に認めるところがすごいですね。

◆日本語でしか表現できない 同じ豚肉なのに「とんかつ」や「ポークソテー」をなぜ別にするのかと聞くと、翻訳家は「とんかつは和食でポークソテーは洋食」と答えました。確かに日本人はあまり意識しませんが、同じ食べものでも平仮名か漢字かカタカナかでイメージが変わりますよね。その言語学者も納得しました。また、患者が医者に痛み方を伝える際、ズキズキ・ガンガン・きりきり等、擬態語の類が豊富なことに着目。日本語は、ひと言で感情や状況や相手との関係性まで表現できる、激レアな言語なのだそうです。そう言えば、英語では「木漏れ日」を表現できる言葉がない、という話が以前話題になりましたっけ。翻訳出来ない日本語はたくさん存在するとか。「わびさび」とか「どうでしょうね」とか。察する文化との関連も大きそうです。

(ラベンダーの花言葉は「沈黙」「あなたを待っています」など)

◆AIを育てる人々 AIに関する動画は多数あります。E・マスク氏やグーグルのお偉いさんなど、時代の寵児と呼ばれる人たちの言葉が紹介されています。一度視聴しただけの私の薄~い😅理解で要約すると、すべての問いは言語化できるはずなのに日本語は違う。AIには効率しかないし問いへの答えしかない。でも日本語では沈黙に価値を置く。答えでなく空気を読む。という感じで、結果「AIを完成させるためには日本語が必要だ」と。youtubeで研究すると、日本語の動画は「無音の『間』の部分でも視聴者が離れないしコメントも多い」「問いかけだけで答えの無い動画でも人気がある」とのこと。日本人の私は「それって珍しいの?」と思います。AIに日本語で会話させようとしたらバグったという話は笑っちゃいました。

◆目標は人間? 沈黙に価値を置く日本らしい感性は、他の国にもあると思います。茶道や武道も嗜む外国人は珍しくないから「間」を理解しているでしょうし、空気を読む人だって居ますよね。ということは、求めているのは日本語の特質でなく人間の特質ではないですか? そもそも、AIに何をさせたいのかな。対話の際に、前後や過去の文脈まで拾い、相手の立場やこちらとの関係性や顔色まで読んで敬語を使い、その日の体調や気分まで考慮し、返事が無ければ無言の意味を推測できる🙁としたら。それはもう、人間じゃありませんか。そういうAIをつくる気ですか? データとプロトコルで造れるほど命は簡単ではないはずですが。

◆何を目指しているのか はるか昔に、人間は天に届くバベルの塔を建てようとして途中で崩壊しました。古代エジプトの王は復活を願ってピラミッドにミイラを安置させましたが、後にお墓を暴かれたり荒らされたりしています。神様に近づきたくなるのが人間の性なら、やりたくなるのも道理でしょうかね。

この動画は、日本語というより日本そのものを評価されていてとっても興味深いです。

Google×AIが直面した“倫理の限界”──日本という未踏の知性

https://www.youtube.com/watch?v=Sacta7jaxp4

ChatGPTが敗北した国、日本─AIと倫理の臨界点【哲学ドキュメンタリー】

https://www.youtube.com/watch?v=QgPocWvCFZk

 世界で空前の日本ブームが続いているようで、何やら畏れ多いかも。人気が過ぎて叩かれたり不具合も増えていると聞くので、私はそれが心配です。