いつか愛せる

DVのその後のことなど

義父の介護ベッド納入

 義父が退院した2日後に介護ベッドの納品。でも急だったので、実はベッドを置くスペースが無い。ものが非常に多い家だった。

 私が手を引き気味にしていたためだろうか。何とケアマネさんとヘルパーさんが協力して、急遽数々の家具類を動かし場所をつくってくださった。5~6人で一気に作業したらしい。

戸棚と大きく重いテーブルを移動させ、雑多な物は「すみません、取り敢えず2階に持って行きました」とのこと。2階は足の踏み場も無くなったが、どうせもう誰も使っていない。

 

 ベッドが届くのは夜の7時半。多分、私が義実家へ行ける時間に設定してくれたのだと思う。仕事の後あわてて義実家へ行き、ちょうど業者さんと鉢合わせ。

 義父はトイレの後だったのだろうか。下半身がトレパンのみでボ~ッと座っていた。ズボンを履いてもらおうと手伝ったが、まったくお尻が上がらない。ズボンに足を通したところまでで、そのまま座っている。

気になるけれど、私は業者さんにベッドの使い方を聞き契約書類に記入しなくてはならない。義父がリモコンの使い方を覚えてくれるかも心配だった。

 業者さんが帰ったので、ベッドにシーツを敷き義父に寝てもらおうとした。すると、まったく動けないことがわかった。

私が必死に支えてもベッドまで数歩も歩けず、半端な形でベッドに突っ伏する形になってしまった! あせった。一体なぜ急にここまで動けなくなったのか。右足の小指と薬指の切断だけで動けなくなったという感じではない。全身に力が入らない様子。業者さんは帰ってしまったし夫は動けないし、他に助けはない。切なかった。

              

 義母がいつ退院できるかもわからず、義父の気力が萎えていたのかも知れない。元は大柄で力強い人だったのに。

それでも義父は努力してくれた。何とか少しずつ体を持ち上げ、私は「痛くないですか?」と確認しながら体勢を整えた。義父は疲れたのかすぐ目を閉じた。

「お母さんが帰ってきたら助けてもらわなきゃいけないから、歩けるようになってくださいね」と声をかけた。そうなれるのかわからなくても言うしかなかった。

 義父は「家の中を歩いて頑張るよ」と言ってくれた。さらに「迷惑かけて悪かったね。気をつけて帰ってよ」と言われた。

私は義父に手をあてて祈った。歩けるようになるようにと。すると聞こえたのか「ありがとう」と言ってくれた。

もうすぐ義父を失うことになるのかと寂しくなった。私の感覚は天に召されるとかいうものではなく「失う」という感じだった。(でも実際には義父はまだ2年ほどいてくれた)