いつか愛せる

DVのその後のことなど

うぶ毛

 

 お昼休みに職場のトイレで鏡を見て戦慄した。

顔のほくろに産毛が2本生えている! しかも白と黒の1本ずつだ!!(怖)

ああ嫌だ。こうしてまた女を捨てるのでなく、勝手に剥がれ落ちていく。

 

朝、化粧する時ちゃんと窓の方に顔を向け手鏡で確認しているのに。

それでも気づかないほど老眼が進んだか。それなのになぜ会社では気付くのか。

 

理由は、女子トイレの大きな鏡と明るさ。

昔は「便所の100ワット」という無駄な物の例えがあったはず。便所は明るくする必要は無いと。

でも会社のトイレはいわゆる「お化粧室」なんだろうなあ。

間接照明まであるから、どちらの方向も本当によく見える。

だからいつも昼食後にうがいをしようとして、ほくろのうぶ毛に気づく。

爪の先に力を入れても短かすぎてうまくつかめず、するっと逃げられて抜けない。

仕方ない。あのトイレの明るい鏡の前以外では目立たないはず、と自分に言い聞かせる。

でも若者の目には見えちゃうのかなあ。

どうか誰も私の顔を見ませんように···と下を向いて席に戻りマスクをつける。

ありがとうマスク。例えコロナが収まっても私はあなたを捨てない。

 

 女を維持することはほぼ諦めているけど、人としての身だしなみは守りたい。

何だか眉毛が長~く伸びたお爺ちゃんを思い出す。いつか私もあの境地に到達するのだろうか?

今はまだだ。新たな対策を考えよう。

眼鏡をかけて化粧する・・・駄目だ、何も塗れない。

職場に毛抜きを置いておく・・・駄目だ、トイレに行くまで気付かない。家を出る前に気付いて抜きたい。

ならば化粧の後に一度眼鏡をつけて確認するしかない。鏡台に眼鏡をひとつ置くか。でも何だか怖い。

眼鏡をつけて至近距離で鏡を見たら、もっと見たくないものが見えそうな気がする。

シミとか、シワとか、ファンデーションのヨレとか、他にも未知の何かが・・・怖い。