いつか愛せる

DVのその後のことなど

イラスト「風が強すぎ」

 昨日も一昨日も強風でしたね。あれは春一番だったのでしょうか?

強風で思い出したオリジナルイラストを貼ります。絵に合わせたショートストーリーも作っていたので少しコピーします。私に文才はないのがバレますが。(私は彩色と文章だけの担当です。絵と手書きの文字は私ではありません) 

  

 我が家の掃除機が壊れて買い替えたときのことです。船長に荷物持ちを頼み仕事帰りに量販店で待ち合わせました。こういう時はすぐお風呂にも入り早々と支度をします。赤いコートに青いマフラーをして鏡を確認します。くせっ毛で跳ねた髪も丁寧にとかします。

「完璧だ」

 その日は木枯らしが吹いていました。一歩外に出るとおしゃれがすべて無駄になりました。コートの裾をしっかりおさえて歩きます。格好良く歩きたいのに両手で服の乱れを押さえ、小股でヨチヨチ歩きです。

 駅前はさらに強いビル風が吹きます。人々は皆一瞬足をとめて帽子をおさえたりよろけたり。船長は重いので飛ばされそうにはなりません。ただ髪はヒュルンと舞い上がり、やわらかいほっぺがぷるぷる波打ちます。まるでスカイダイビングしている人のようです。「風が強すぎ」と言いたくて口をあけた瞬間、強風が口に入ります。ほっぺが歪んでうまく発音できません。

「かえが・・・かぜが・・・つおすぎ・・・」

マフラーが顔にペタッと張り付き前が見えなくなりました。両手でコートをおさえているためマフラーは直せません。歪んだほっぺのまま

「風が・・・つおすぎ」

「前が・・・めえまへん」

と繰り返しながら歩きやっと店に到着。私の顔を見たときには鼻息荒く、

「風が強すぎです!」

と宣言しました。それでも無事に掃除機を買う計画は遂行出来ました。

この強風の中の船長は笑顔に見えます。笑顔の多い船長でもお洒落した日の強風はうれしくなかったはず。

「どうして笑っているのですか?」

「違います。笑っているように見えるだけです」

顔のつくりのせいで笑顔に見えるのでよく誤解されると話してくれました。(続く)