いつか愛せる

DVのその後のことなど

修羅場の記憶と食べて乗り切ること

 夫が無音だと眠れないタチなので、毎晩動画を回しっぱなしです。私が今朝目を覚ますと「孤独のグルメ」のゴローさんの声が聞こえてきました。性格の悪い顧客に腹を立てたゴローさんが仕事を断ったところです。「ハラが立ってもハラはへる」と言って食事に向かいました。

◆意識の切り替え ゴローさんは切り替えがうまいです。と言うより、考える前にお腹がへるのですね。空腹を感じて「店を探そう」と動き、嫌な記憶を切り離します。そして美味しく食事をすればもう、幸せな気分になるようです。 私もハラが立ったときは真似しようと思います。

◆食欲がなくなること でもどうにも食欲を感じないこともある・・・と思い出しました。私は過去に体重が40キロを切っていた(身長は標準です)時期が2度あります。DVの真っ只中と、義両親の介護中に夫も倒れて死にそうに見えていたころ。

食べなくては体がもたないと思うのに、どうにも食べられない日がしばしばありました。そしてそんな時期でも、食べられた瞬間もあります。人間は脆いようでもあり、案外しぶとくもありますね。

◆修羅場でもお腹がすいたこと もう昔のことで記憶が曖昧ですが。アルコール依存症だった夫が暴れて部屋もぐちゃぐちゃになりました。私は「ドラマみたいな修羅場だ」と思い、そのうちぼんやり考えました。これがドラマならもうCMが入って翌朝のシーンから始まるのに、なぜまだ修羅場のままなんだろう。現実はドラマとは違うのだと。人間は極度の緊張状態はあまり長く保てないようです。

夕飯抜きで修羅場に突入したためか、やがて空腹まで感じました。夫が酔い潰れて眠ってしまい、ひと息つけたからだったかも知れません。人間ってこんな時にもお腹がへるんだなと思いました。

            

◆修羅場でも食べられたこと DVの渦中に、めずらしく友人宅に泊まりに行った日のことです。夫と共通の友人だし事前に「行ってこいよ」と了承もとれていました。でも夜になると電話をかけてきて私を脅し始めました。何が気に入らないのか「これから自分の腹を切る」と言って電話を切られました。私が帰ろうにも終電に間に合わない時間です。

「今日は帰らない」と決めた私を、友人はお洒落なファミレスに連れて行ってくれました。死にそうな顔の私のために祈り、気を紛らわせるおしゃべりをしました。

私は食欲がなくあんみつを注文していました。「あ・・・美味しいって感じる・・・」と友人に言った記憶があります。不思議でした。今その瞬間にも酔っ払った夫が切腹しているかも知れないのに。

◆その瞬間の安心 食べられない時でも、少しそこから視線を外せれば食欲のスイッチが入るのかも知れません。修羅場で物理的に食事できない時はどうにもなりませんでしたが。友人がファミレスに連れて行ってくれた日、私は帰らないと決めたので、少なくともその夜は誰にも脅かされずゆっくり眠れる環境でした。ひと時でも目の前に安心できる場がある。それだけで食べ物が美味しく感じられたことを友人に感謝しています。