いつか愛せる

DVのその後のことなど

ものが多い義実家

 義両親は元自営業だったためか、お中元お歳暮や冠婚葬祭にかかわる品物が多かった。義母は忙しくて捌ききれなかったようで、義実家に物が多い理由のひとつ。

私たちが結婚して間もないころも、時々石鹸などをもらった。腐るほどあるから持っていってと言ってくれたが、古過ぎたのか本当に変質した石鹸まであって驚いた。

 介護が始まり少しだけ物を整理すると、賞味期限切れの高級缶ジュースなども出てきた。私は少しくらいなら期限を過ぎても気にしないが、義母は食品には神経質で「もったいないけど捨てて」という。1本1本あけてバケツに捨てていくのは気が重かった。

 

 届くお中元やお歳暮は減っていたが、まだ親戚から届いていた。ある時、北海道に嫁いだ親戚から大量のトウモロコシが届いた。義母は憂うつそうな顔で「年寄りの二人暮らしだって知ってるのに食べられると思うのかしら」と言う。

 こんな美味しそうなものを無駄にしないために、私は張り切った。新鮮なうちに処理しなくてはいけない。

段ボールを開封して皮を全部むきひげをとると、大きなゴミ袋がいっぱいになる。丈夫な段ボール箱は義母の力ではつぶすのも難しいだろう。

身が黄色のトウモロコシと白いトウモロコシが10本ずつ、全部で20本あった。確かに老夫婦ふたりでは手に負えない。でも美味しそう!

 一番大きな鍋を何度も沸かしてゆでた。歯が悪いので苦労していたが1本ずつ食べてもらえた。「残りは持って行って」と言うので数本は冷凍し、残りをもらって帰った。大きな荷物が一気に片付いて義母は笑顔になった。私も持ち帰った2種類のトウモロコシを堪能した。

 

 お礼をするからビール券を買ってきてと頼まれた。重いものを買いに行けないから毎年ビール券でお返ししていたそうだ。お礼の手紙を送るなら「もう食品は送らないで」と伝えればいいのにと思ったが、口出しはしなかった。

 

 義実家の開かずの天袋には、引き出物らしい箱がたくさん入っていた。折を見て一部開けさせてもらうと、高級バスタオルや寝具類も、使えるものもあれば箱ごと変色したものもあった。くれた人の気持ちを思うとなおさらもったいないと思う。

 ある日、手編みのショールを見つけた。深いグリーンでかぎ針編みの三角ショール。これは市販品ではないので不思議に思い義母に見せた。

義母は「思い出せない」と言った後、「もしかしたら、姑さんがくれたのかも」

義母の義母、つまり義父の母と一時期同居していたという。「そうだ、お礼にって編んでくれたんだわ」

 同居中に確執はあったが、おばあちゃんが亡くなる前にはお礼を言われたと話してくれた。思い出してもらえて良かった。義母はそのショールを膝掛けとして使い始めた。

私は会ったことのないおばあちゃんの手編みの思いが生きて良かったと思った。