仕事帰りに秋葉原駅の近くで信号待ちしていた時のこと。中国人らしき一家のお母さんから話しかけられた。
「Do you know the most famous electric @*,./:;#[+o?…」
う···! 電気屋を聞かれているのはわかる。英語圏の人の英語よりは聞き取りやすい。
でも何だっけ? 慌てすぎて出て来ない。なぜそういう時、人は斜め上を見上げるのか。
口を半開きにして上を向く私を見て、そのお母さんは諦めたらしい。黙って信号の変わった横断歩道を渡り始めた。
その時、どこかに引っ掛かっていた私の記憶がやっと戻った。
「ヨドバシ!!」
「OH!」
私は目の前の建物を指さし「this building!」 他に言えることはない。看板が英語なら彼らもわかったろうけれど、カタカナだしなあ。
「thank you!」と無事にその家族はヨドバシAkibaに入っていった。しかし私はヨドバシの目の前にいたのに、どうして名前が出て来なくなるかな。
英語が苦手な(というより日本語しか話せない)のはどうしようもないけれど、せめて知っていることは思い出したい。これ以上ボケず緊張体質も改善しますように。
ところで私は緊張しやすくてボケをかますが、夫は堂々とボケる。
まだ夫の実家があり、しばしば通っていた時のこと。庭先からじっとこちらを見ている白人男性がいたらしい。
夫はサッと庭に出た。高齢者しか居ない実家を守る! とすごい目つきで「なんだ!?」と睨みつける。
と、その白人男性はあわてて自分のカメラと庭先のモクレンを指さして必死に何か言う。
濃い紫色の美しいモクレンが花盛りになっていた。彼はきれいな花の写真を撮っていただけ。
そうかと納得した夫は笑顔を作り「Don't cry」
男性はちょっと戸惑う表情、でも意図は理解したらしく表情がやわらぐ。
夫は再び「Don't cry」
そして「写真撮りなよ」というつもりで「Please」
後になって自分の言い間違いに気づいて大笑いした。
「泣くなって言われてその人、困ったろうね」
「二度も言っちゃったぞ。しかも偉そうに」
「泣くな、お願いします···って、泣いてないし」
「Dont’worry のつもりだったんだよ」
その美しいモクレンは実家を更地にして売る際に切られてしまったので、もしあの男性がまだ近所にいるなら、残念に思ってくれたかも。