いつか愛せる

DVのその後のことなど

無くなる家からもらわれて行った竹

 義実家売却の契約が済んで、片付けていた時期のこと。

私は疲れていよいよ「どうしたらいいんだろう」と感じていた。夫は義母の余命宣告からせっかく10年以上もやめていたアルコールを再開させてしまい、さらに具合が悪い。

 そう言えば、結婚した数年後に実家の猫のミツコが老衰したとき、かなり荒れた。「ミツコの件で乗り越えたから両親がいく時は心配ない」と言ったけれど。夫は私の仕事中に突然電話してきて「お袋は死ぬんだな・・・?」と確認するように言ったりした。

でも私はそのことに対してしてあげられることなどない。目の前のことで一杯だった。

 

 土曜日、半日は存分にゴロゴロして休んだ後にひとりで義実家へ行き、義父が入居する施設に持っていく物を選ぶ。まずは義母が使っていた小ぶりなタンスに決めた。大きな家具は持っていけないから。

 先にタンスをカラにする。義母の衣類を出してしまうところからして、精神的に辛い。

次に入れる衣類を探す。義父の持っている靴下の多さにあきれて苦笑する。捗らなくても時間はどんどん過ぎる。こういう作業はいつも切ない。

 途中、チャイムが鳴った。もう用事のある人はいないはずなのに、一体なんだと不機嫌な顔で「はい」と出てしまった。

すると自治会の女性で「お庭の竹を切らせていただけませんか」という。近々取り壊しで騒音があるからと、業者さんが近所に挨拶していたため、事情をご存知らしい。

 庭には細い竹が何本もあった。居合道の段持ちの義父は、若いころは真剣でその竹を切ったりしていたらしい。

        

庭の手入れも義父が行っていた。でも数年前から放置され、庭木はどれも伸び放題。直径1センチくらいの真っ直ぐな竹は3~4メートルになって2階の窓に届き、ちょっと変わった光景だった。

 それをガーデニングに使いたいとのこと。こんな真っ直ぐでいい竹はなかなか無いからと。

なるほど。プラスチック製よりずっと見栄えがよさそう。この家の竹だけでも残ってくれるなら義父も喜ぶかも知れない。私はもう夫に相談もせず「どうぞどうぞ」と庭に入ってもらった。小型のノコギリで4~5本切って行かれたろうか。

 8月だったからもう朝顔のツルを巻くには遅いかな。どんな風に使われているか確認していないけれど、大切に生かされていてほしい。

 

 まだ冷蔵庫に残っている食材や、未使用のシーツなども少し持ち帰った。義実家に置きっぱなしのノンちゃんの遺骨も、そのうち待って行かなくてはと思った。