いつか愛せる

DVのその後のことなど

目的と手段を取り違えない

 介護ネタが続いたのでたまには「DVからの回復」の話。20年以上前に本を出して同名のサイトを運営していたころのこと。(出版社の廃業のため書籍はすでに絶版)

            

 DVに悩む方からしばしば相談メールをいただいた。20年前なのでスマホは存在せず、パソコンを持たない人も多かった。ある女性(仮にAさん)は携帯からのメールで文字制限(150文字くらい?)があった。交際中の相手と結婚したくて暴力をやめさせたいという。そんな複雑な内容にどうやって150文字程度で返事を書けるだろう。

 しかもAさんは私の素人丸出しの著書を読んでくださったけれど、趣旨は理解していない。タイトルに「共依存」と入れたのにそこは無視? 知識や教養という点で賢い女性だとは思うけれど、自分が知りたいことしか見えないのかな。私は暴力をやめさせる方法など書いてはいなかったのに。

 変えられるのは自分だけだと、サイトの掲示板に何度も書いた。だからAさんにも掲示板に参加してほしかった。でもパソコンを買う予定はないと言われる。やむなく何度かメールをやり取りして、彼女に呪いのような思いがあると知った

 彼女のお母さんは義両親との同居で不幸になり、Aさんに「絶対に長男と結婚しては駄目」と言い聞かせた。だからAさんの交際相手は次男。Aさんと同じ職場で彼女の方が立場が上の(職業に差別はないけれど一般的に上と判断されやすい)仕事。Aさんは彼を上から「うまくコントロールしよう」としていたし、どうも互いに愛情があるとも思えなかった。

 文字制限の中でどう伝えればいいのか。私はあえて失礼でショッキングな言葉を使った。交際相手のことを「彼」ではなくAさんの「sex friend」と呼んだ。

そして彼女が目的と手段を取り違えていると思うと伝えた。相手の両親との別居は、いくつかの不幸を回避する手段のひとつに過ぎない。一体何のために結婚したいのか。

 手段と目的の意味は理解してくださったので、私はAさんとのやり取りを終えた。到底そのカップルを応援はできなかった。ただ、今はそれも私の偏見だったかも知れないと思う。仮にその結婚が失敗するとしても(巻き込まれるお子さんがいなければ)それは本人の自由だし、学ぶことは多いはずだから。

 

 こんな昔のことを思い出したのは、夫の両親のことを書いていたから。私の夫は長男どころかひとりっ子。ひとり息子と結婚した結果の事例を当時のAさんに知らせたかったなと思う。

介護を分担できない苦労は確かにあった。でも兄弟がいればまた別のややこしさもあるに違いない。

それにひとり息子の妻だからといって、私は夫の両親と同居したことはない。義両親との関係も悪くない。むしろ介護を通して親しくなった。だから苦労はしたけれど不幸ではない。それをあの時に伝えられたら良かったのにと思い出して、少し残念。