いつか愛せる

DVのその後のことなど

ヘルパーさんへのお年賀

 日本の悩ましい慣習のひとつ「付け届け」。病院では禁止でも守られていなかったけれど、ヘルパーさんにはどうすればいいか。もちろん本当は不要だと思う。でもお世話になっている気持ちを表したいとき、特に年配者は物をあげたくなるらしい。

 

 年末の慌ただしい休日、私は買物をすませて自転車で自宅に向かっていた。そこに義母から電話がかかってくる。「緊急事態か?」と気になって出ると。

「お父さんが、ヘルパーさんにお年賀を買うって自転車で出かけようとするの」

義父が段々外に出なくなっていたころだった。義母の心配は自転車で混んだ場所に行って転ぶこと。もうひとつが糖尿病なのに買い食いされることだったと思う。本人の前だからはっきりは言わなかったけれど。

「じゃあ私が買いますから、お父さんに電話をかわってください」

義父に「どんな物にしますか」と聞くと「タオルか何かで・・・」と歯切れが悪い。買物好きな義父は本当は自分で行きたいんだろうな。

 私は帰る途中ですでに荷物も多い。面倒でため息が出た。でも当時は体力があったので雄々しくお年賀のゲットに戻る。

量販店にお年賀用のタオルがあるはずだが、年末なのですでに売り切れだった。仕方ないので大手スーパーのご進物売り場へ。

夫の実家に来るヘルパーさんは全部で10人位。予備を含めて12名分。五百円程度のおしゃれなチョコを買うと、立て替えた私の財布が空になった。(タオルの方が安かったのに)

 

 ヘルパーさんは年末年始も休めない。そこは医療従事者と同じハードな環境。大変だと思い義母は「元旦だけは休んでください」と断った。私たちも居たし1日くらいは問題なかった。

お年賀は会う機会にひとりひとり義父から渡したらしく、もちろん全員受け取ってくれた。

 

 1年目がそんなだったので、2年目は早めにお年賀の用意を考えた。そのころにはもう義父はまったく自ら外には出なくなっていた。

「ヘルパーさんへのお年賀どうしますか?」

「ああ、何かあげなきゃね」

ならば私の目標は ①節約すること ②ヘルパーさんに喜んで受け取ってもらえること

               

           

 量販店でかわいいラッピング袋と、大袋のチョコ、クッキー、ラムネ菓子etc. なるべく売れ線のお菓子を買い込んだ。年末は12名分に分けて袋詰めして「thank you」のシール貼り作業。ラッピングしたお菓子の詰め合わせを段ボール箱に入れて実家に持って行き準備完了。

前年の半分くらいの予算でできた。それにこういう普通のお菓子の方が受け取りやすいのではないか。お子さんがいるなら持ち帰ってくれてもいいし、移動の合間にでもちょっと摘んでもらえたらいいなと思う。

 

 この年はヘルパーさんのローテーションが変わったのか、12名分作ったらかなり余ってしまった。もちろん喜んで私が引き取った。