いつか愛せる

DVのその後のことなど

ベルサイユのばら_エピソード編感想⑤

 ベルサイユのばらの感想を登場人物順に書いて「次はアンドレにしよう!」と思った。11巻のエピソード1がアンドレの子ども時代を描く回。

でもこの回の主役はアンドレというよりは、幼馴染みの貧しい女の子で、後にオルレアン公爵の寵姫となるクリスティーヌ。彼女に「おとなになったらお嫁さんにしてね」と約束させられたのに、当時8歳のアンドレはまったく覚えていない。オスカル以外の女性には目もくれないアンドレの朴念仁(←褒めてます)😕度合いが証明されただけ。

 で、寡黙なるアンドレが何を考えていたかを考察しようと、久々に本編を斜め読み。いや危ない危ない💦本腰入れて読みかけた。読んでいたら書く時間が無くなる。

前から何となく疑問だったのは、「オスカルが王党派から民衆側に思想を変えるのに、アンドレは影響を与えたのか?」ということ。漫画の中では、アンドレからオスカルに平民の苦悩を伝えるようなシーンは一切ない。なぜか。

 オスカルから見てアンドレは「双子」のような存在だけど、アンドレから見ればふたりの関係は「光と影」。常にアンドレは影。

理由のひとつは、ジャルジェ家への恩義と身分の相違だと思う。ジャルジェ家のばあやの孫であるアンドレを、8歳から引き取り面倒を見てくれた恩がある。

もうひとつは、オスカルへの想い。そこには愛情や友情や他にも様々ある。若き日に不注意でマリーアントワネットに怪我をさせてしまい死刑を免れないところ、オスカルの命懸けの取りなしで助けられた。その際「自分もいつかオスカルのために命をかける」と誓っている。オスカルの方で身分の違いを気にしなくても、アンドレは身分を忘れることはない。常にばあやに諭されていたはず。

 一方、アンドレの革命への傾倒についての考察。ジャルジェ家で何不自由なく暮らしても、アンドレはベルサイユの外の世界を知っていたと思う。でも影だから何も言わない。常にオスカルの側にいて守るだけ。

           

 寡黙なアンドレの名言だと思うセリフのひとつが「武官はどんな時でも感情で行動するものじゃない」。このセリフはオスカルにも、後のアランにも影響を与える。おかげで憎しみにより人を傷つけたり殺めたりすることを避けられた。

オスカルのために行動する時のアンドレを見れば、本来はおとなしいわけでないとわかる。でも淡々として見えるのは、大変な精神力で感情を抑えてきたから。そんなアンドレの言葉だから、彼らは重く捉えたのではないか。

 やがてかつての誓い通り、アンドレは何度もオスカルを助けている。(ジャンヌに刺されそうになった時/黒い騎士として活動した時/アランたち衛兵隊員に襲われた時/ジャルジェ将軍に成敗されかけた時/バスティーユ襲撃の時)そうして、ジャルジェ将軍にさえ「あれはおまえなしには生きられん」と言わしめた。

 私の結論。革命時にオスカルを影響したのはロザリーやベルナールで、後はオスカル自らがロベスピエール等と関わっている。アンドレは口を挟んでいない。オスカルに何か悟らせることさえしていない。オスカルがどう生きる選択をしても、アンドレは影として守り続けた。アンドレに意思が無いのではなく、それがアンドレの意思だから。

 どうやらその辺が実写映画やアニメ版とは違うらしい。どちらもアンドレが革命側の意思を持っていて、オスカルはアンドレに従う選択をする。(脚本書いたの男性でしょ?と突っ込みたくなる)

 確かにそうするとアンドレの人物像がわかりやすい。でもその分、オスカルの魅力が薄れる。軍人(=男性)として育てられたことに苦しんだ後、父親に「感謝します」と言い、軍神マルスの子として生きる宣言をするのが原作のオスカル。

 オスカルは常に自分で選択する。アンドレはオスカルを引っ張ることはなく、常に支え守る。オスカルはアンドレがそうしてくれることに、何の疑いも持たない。それは上官と部下という立場だからではなく、当たり前のように同志として会話している。

 その辺のアンドレの心の中を、池田理代子先生にはもう少し書いてほしかったなあ。